前回のコラムで、「いいこと日記」をご紹介しました。今回は、どのように続けるとよいか、具体的な実践方法をお伝えします。
「いいこと日記」は、特別な準備や文章力を必要としません。大切なのは、「うまく書くこと」ではなく、「続けること」です。
1. 書くタイミングを決める
もともとの研究では、被験者に、就寝前にその日に起きた「よかったこと」を3つ書き出し、あわせて「なぜそれが起きたのか」を簡単に振り返ってもらいました。寝る前は一日を振り返りやすく、感情も落ち着いているため、記憶と感情が結びつきやすいとされています。とはいえ、夜が難しい方は、自分の中で「振り返りの時間を持つ」というゆるやかなルールでいいので、一歩を踏み出してみてください。「続けること」が大切です。
2. 「自分にとってよかったこと」を3つ書く
ポイントは、「大きな出来事」を探さないことです。また、「世間一般のポジティブなこと」ではなく、「自分にとってよかったこと」を書くことが大切です。例えば、このような日常の中の小さな出来事で十分です。
・会社で同僚と楽しい雑談ができた。
・帰り道、ふと空を見上げたら、月がとてもきれいだった。
・温かいあんまんを食べたら、気持ちまでほっこりした。
いいこと日記は、自分を無理に前向きにさせるために書くのではありません。すでにある小さな幸せに気づいて記す、そんな習慣なのです。
3. 可能であれば、振り返りを添える
セリグマンらの研究では、良い出来事を書き出すだけでなく、「なぜそれが起きたのか」を簡単に振り返ることが、介入の一部として組み込まれています。この内省のプロセスによって、ポジティブな出来事を自分の行動や環境と結びつけて理解しやすくなり、幸福感を高める効果が、より強く、長く続くことが示されています。例えば、「同僚と楽しい雑談ができた」のは、「自分が相手の話をよく聞いたからかもしれない」のように。思いつく範囲で、一言添えるだけで十分です。
4. 3週間は「評価せずに」続ける
書いてすぐに何かが変わらなくても、問題ありません。大切なのは、「効果を感じよう」とせず、3週間、淡々と続けることです。この期間が、脳の注意の向きや思考のクセが変わる転換点になります。
同時に、3週間続けたあとに振り返ってみると、自分が何に喜びを感じているのか見えてきます。わかっているようで、自分のことは案外わかっていないもの。「自分にとっていいこと」が分かれば、その時間や行動を意識的に増やすことで、より心地よい状態をつくることができるでしょう。
5. 記録は、続けやすい方法で
ノート、手帳、スマートフォンのメモアプリなど、形式はなんでもOKです。自分にとって負担の少ない、継続しやすい方法を選ぶといいでしょう。
ちなみに、私は手書き派です。続けるための工夫として、上質そうなアイボリー色の紙のノートとブルーブラック色のフリクションペンを選んでいます。私の好みなので少し気分が上がり、筆が進むからです。
最後に。
いいこと日記は、気休めのポジティブ思考ではありません。ポジティブ心理学の研究によって裏づけられた、再現性のある幸福習慣です。毎日を劇的に変える必要はありません。「自分にとってよかったこと」を見つけ、そこに目を向ける。その積み重ねが、人生全体の感じ方を、静かに、しかし、確実に変えていきます。ぜひ、「いいこと日記」仲間になってください!
参考文献
(Three Good Things in Life)
Martin E. P. Seligman, Tracy A. Steen, Nansook Park, Christopher Peterson (2005). Positive Psychology Progress: Empirical Validation of Interventions. American Psychologist
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