
2025年10月、慶應義塾大学出版会から全464ページにも及ぶぶ厚いウェルビーイングの書籍が出版されました。経済学者のリチャード・レイヤード教授と行動経済学者のヤン-エマニュエル・ドゥ・ヌーヴ教授による英書『Wellbeing: Science and Policy』の日本語版『ウェルビーイング学 ー理論・エビデンス・実践ー』です。個人的には、ウェルビーイング学の赤本と呼んでます。
ハッキリ言います。この本、めちゃくちゃ特別で重要です。
なぜこの本が「特別」なのか・・・
ウェルビーイング学会の監修チームの高野翔准教授(福井県立大学 地域経済研究所/PLAY CITY 代表理事/ウェルビーイング学会 理事)によりますと、この本は「主観的ウェルビーイング(Subjective Well-being)に関する世界初の本格的な教科書」なんだそうです。
ちょっと待って・・・「世界初」って本当??と思うかもしれません。
はい、本当です。ご存じの通りウェルビーイングの書籍は、これまでもたくさん出版されてきました。例えば、幸福学の第一人者である前野隆司・前野マドカご夫妻による2022年の『ウェルビーイング』(日経文庫)は、日本におけるウェルビーイングの入門書として多くの人に読まれてきました。この本は大変親しみやすく、ウェルビーイングとは何か、なぜ今必要なのか、どう実践するかをコンパクトに解説してくれている名著です。
でも、今回の『ウェルビーイング学』は、そうした入門書とはまったく違う性格の本なんです。
他のウェルビーイング書籍との決定的な違いとは
この本の最大の特徴は、何と言っても、「科学としてのウェルビーイング」を体系的に学べる教科書だということかと思います。
日本でもウェルビーイングがバズワードになりつつある今2025年、本書では、GDPのような経済指標が必ずしも人々の幸福を保証しないことが明らかになり、ウェルビーイングの測定方法も大きく進歩しているという背景のもと、最新の研究成果が集約されています。
前野隆司・前野マドカご夫妻の『ウェルビーイング』が「ウェルビーイングって何?」という疑問に答える本だとすれば、この『ウェルビーイング学』は「主観的ウェルビーイングの科学的測定から政策実装まで、個人・社会・政府の全レイヤーを網羅した、学際的な社会科学の体系的教科書」にふさわしいお見事な教科書構成になっています。
簡単に言えば・・・
- 前野夫妻の『ウェルビーイング』 → ウェルビーイング入門書。実践のヒントが満載!
- 今回の『ウェルビーイング学』 → ウェルビーイングの学術的基礎を網羅した教科書!
・・・みたいな感じです。
個人的には、両方読むことで、ウェルビーイングへの理解が一気に深まると思います。
著者も日本語版の監修チームもまさにウェルビーイング最先端
著者のリチャード・レイヤード教授は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済パフォーマンスセンターの創設者で、最初の著書『Happiness: Lessons from a New Science』は20の言語に翻訳(残念ながら日本語未翻訳💦)されています。もう一人の著者ヤン-エマニュエル・ドゥ・ヌーヴ教授は、オックスフォード大学サイード・ビジネススクールの教授で、ウェルビーイング研究センターの所長です。
つまり、世界のウェルビーイング研究を牽引する二人が書いた本なんです。
そして日本語版の監修は、ウェルビーイング学会の監修チームが担当し、前野隆司(武蔵野大学ウェルビーイング学部長)先生をはじめ、石川善樹さん、保井俊之さん、鈴木寛さん、高野翔さんら、日本のウェルビーイング研究の第一人者の先生たちがマーベルのアベンジャーズの如く名を連ねています。この事実だけを見ても、ウェルビーイングを学ぼうとしている人たちにとって、この書籍がいかに読むべき価値のある本であるかがわかります。
本書では、主観的ウェルビーイングについて、なぜ注目が集まっているのか、どのように測定・研究するのか、どのような要因が影響を与えるのか、逆にウェルビーイングはどのような影響を個人や社会に与えるのか、実際にどのような政策が有効なのかといった問いに対する大切な示唆を与えてくれます。
464ページという分量からも分かる通り、これは「読み物」であると同時に、ウェルビーイングを本格的に体系的に学びたい人のためのリファレンスでもあると思います。研究者、政策立案者、企業の人事担当者、まちづくりに関わる人、もちろん個人など、ウェルビーイングを「知る」「測る」「実装する」立場の人には必携の一冊であると思います。
監修者からのメッセージが熱いです!
ちなみに、福井県立大学の高野翔准教授(ウェルビーイング学会理事)は、noteで本書の解説パートを特別公開されています。
『ウェルビーイング学 ー理論・エビデンス・実践ー 』の解説パート特別公開
高野准教授は、著者たちが「なんとしても日本語版を出してほしい」と依頼をしてきた背景として、「一人でも多くの日本人に主観的ウェルビーイングという分野で研究あるいは実践して頂くきっかけに本書がなってほしい」という想いがあったからではないかと語っています。
また、本書の出版社である「慶應義塾大学出版会」のnoteでも、冒頭部分の試し読みが公開されています。
こうしたnote記事を読みますと、個人的には、この本がどれほど熱い想いで日本に届けられたかが伝わってきます。本書の赤色が、激アツウェルビーイング書籍である証として燃えている心を表しているのではないかと勝手に解釈しています。
日本のウェルビーイング研究の「今」
主観的ウェルビーイング研究は、いま第3世代の若者たちが世界各地で活躍し始めており、本書は第1世代を代表するレイヤード教授と第2世代を代表するドゥ・ヌーヴ教授の子弟コンビによって、第3世代の育成をめざして執筆された教科書でもあります。つまり、本書は過去から現在、そして未来へとつながるウェルビーイング研究の系譜そのものでもある、、、そのようにも感じられます。
ちなみに、日本で2021年に設立されたウェルビーイング学会(私も学会員です。)は、まさにこうした研究の発展と交流を推進する組織として活動しています。日本でも、ウェルビーイングは単なるバズワードではなく、学問として、実践として、着実に根付きつつある気がしています。
・・・ということで、本書はこんな人におすすめです!
🍀 ウェルビーイングを本格的に学びたい人
🍀 企業や自治体でウェルビーイング施策を担当している人
🍀 研究者、学生
🍀 政策立案に関わる人
🍀 まちづくり、地域活性化に携わる人
🍀 前野夫妻の『ウェルビーイング』を読んで、もっと深くどっぷりウェルビーイングについて知りたくなった人
逆に、ウェルビーイング初心者には少しハードルが高いかもです。その場合は、まず前野夫妻の『ウェルビーイング』(日経文庫)で基礎を押さえてから、この『ウェルビーイング学』に挑戦する流れがおすすめかなと思います。(もちろん、最初からこの本を読んでもいいと思います!)
464ページと重厚で、値段も4,950円。決して安くもありませんが、世界の最新・最善の到達地点を示し、今後のウェルビーイングフロンティアへの道筋を示してくれる本書は、日本のウェルビーイング研究における重要な道しるべとなると考えています。
「幸せって大切だよね」という感覚を「幸せをどう測り、どう実現するか」という科学につなぐ、、、この本は、そのための羅針盤のように思います。
上記に当てはまるかも思った方、さらにウェルビーイング学の世界へ一歩踏み出してみようという方は、ぜひ読んでみることをお勧めします!
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