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「ライフデザイン経営」とは?ウェルビーイング視点で読む、育児・介護とキャリアを支える経産省の提案

しあわせコラム

ご存じの方もいると思いますが、2025年8月に、経産省が従業員のウェルビーイングをサポートすることをテーマに新しいウェブサイトを開設しました。

皆さん、「ライフデザイン経営」という言葉をご存じでしょうか。
また新しい経営用語が出てきたのかな?どこかで聞いたことのある話を、別の言い方で言っているだけなんじゃないのかな? ちょっとそんなふうにも思ったりしました。

でも、経済産業省(METI)のページを読み進めていきますと、この言葉には、丁寧に「今の社会にとって必要な視点」が込められているかもと感じました。

ライフステージを支えるサービス活用による多様な人材活躍を推進するための情報発信を行うウェブサイト開設の案内ページ

「ライフデザイン経営」とは?

経産省によりますと、「ライフデザイン経営」とは、「社員がキャリアとライフを両立し、充実したライフデザインを実現できる環境を提供することで、人材の能力を最大限引き出し、企業価値向上につなげる経営のあり方」 と定義されています。

お役所らしい少し硬い表現ですが、噛み砕くとこういうことかなと思いました。

仕事の設計だけではなく、人生の設計も含めて支える経営。

そしてそのことが、巡り巡って企業の力にもなっていく、と。

ポイントは、「福利厚生を増やす」や「制度を置く」に留まらず、従業員の人生設計(ライフデザイン)を支援することを“経営”として位置づけている点かなと。また、単なる制度や人事施策の話としてではなく、ウェルビーイングの社会実装に向けた提案のひとつとして捉えることもできるのではないかとも思いました。

「仕事」の話なのに、「人生」の話になっているところがいい

ウェルビーイングという言葉自体も、様々なところで見聞きする機会がとても増えました。

しかし、「心地よく生きましょう」「癒されましょう」という方向にだけ受け取られている。。。と感じる機会も増えました。
もちろんそれも大切なのです。でも、ウェルビーイングは(少し揶揄するような表現を使うと)お花畑のような概念ではなく、より現実的な概念として捉えることが大切だと思います。

例えば、プライベートでは、育児、介護、家族の事情や病気であったり、仕事においては、異動や転勤、海外赴任で引っ越しなど。あるいは、自分自身の体力や価値観の変化なども、、、。

私たちの暮らしや人生はずっと一定には進みません。それに、変化は、ときに自分たちの努力ではどうにもできないカタチでやってきます。

それでも、職場では「仕事は通常運転できることが前提」、「プライベート(人勢全般)側の都合は、なるべく仕事に持ち込まない前提」という空気が残っていることもあるのではないかと思いますが、皆さんの職場はいかがでしょうか。

だからこそ、「ライフデザイン」という言葉で、働く人の人生そのものを「経営の視野」に戻してきたところに、希望があると感じました。

「支援」と言いながら、実は“自律”がテーマになっている

経産省のページでは、「ライフデザインサービス」という概念もあわせて紹介されています。

ライフステージサービス|経済産業省

これは、個人が人生の計画を主体的・自律的に自己決定しやすくするために、必要・有用な情報や気づきを提供するサービス、とされています。私は、個人的に、この「主体的」「自律的」という言葉がいいなとも思いました。

会社が答えを用意するのではなく、人生の選択をするのは私たちであり、その意思決定を支える。
例えば、出産後に、子育てのために一定期間、職場から距離を置く選択をしたい人もいれば、すぐに職場へ復帰する選択をしたい人もいます。
働き方改革という名のもとに、働く時間が少なくなったり、役割が細分化するといったことではなく、働く人の人生の意思決定を支える経営への改革に向かうことがウェルビーイングの観点からも大切だと言えます。

幸福度の高い人は、「自分の人生を自分で選べているという感覚がある」といった研究結果があります。
逆に、選べない感覚が続くと、人は静かにすり減ってしまう。

ライフデザイン経営は「支援」というより、人生の舵を握る力を取り戻すための「環境づくり」として捉えられると思います。

「企業価値につながる」という言い方を、どう受け止めるか

ただ、少し危ういというか、ここはきちんと押さえておきたいと思うポイントも個人的にありました。

経産省の説明の中では、ライフデザイン経営が社員のウェルビーイング向上につながり、さらに企業価値向上にもつながることが期待される、と書かれています。

これは確かに重要なポイントです。
しかし、私はここを読むときに、ひとつだけ明確に気をつけたいと感じたことがありました。

「ウェルビーイングは儲かるからやる」
「制度は生産性が上がるから採用する」
「さらに効率的な方法が発見されたら乗り換える」

直接的に、こういった表現はされませんが、ウェルビーイングと言う言葉自体が先行している現在、もしもその方向で読み違えられた方向にいってしまうと、ウェルビーイングが「経営の道具」になってしまいます。目的と手段が逆になってはいけません。

前野隆司先生のウェルビーイング経営と重ねて考えてみる

この点において、私は、幸福学の第一人者であり、武蔵野大学 ウェルビーイング学部長/慶應義塾大学名誉教授の前野隆司教授の「ウェルビーイング経営」についての考え方と併せて押さえておくことが肝要だろうと思います。

前野教授は、幸福な従業員は創造性が高く、生産性が高く、企業価値にもプラスになるというデータがあることを示しつつも、同時に次のように述べています。

「私は、従業員が幸福であることが利益を生むからという理由で従業員を幸福にすべきだとは考えていません。幸福は基本的人権(幸福追求権)でも謳われており、すべての人は幸福な状態で働くべきだと考えています。」と。

つまり、利益はあくまで結果としてついてくるものであって、幸福は本来、目的として守られるべきもの。

この価値観が「ウェルビーイング経営」の核だと私は理解しています。

また、前野教授は、「『ウェルビーイング経営』とは何かと申しますと、従業員、顧客、そして経営者の三者が共に幸福である経営のことです。」とも言っています。ライフデザイン経営は、従業員の幸福が、より持続的なものになるための営みであり、働く人が尊厳を失わずに生きていける社会を支えるひとつの仕組みとして機能させていくことにより、ウェルビーイング経営の実現へと繋がっていく手段である、と捉えることができるのではないでしょうか。

人生には変化がある。だから、仕組みのほうが変わっていく

言うまでもなく、人生には必ず変化があります。先に述べたように、育児、介護、病気、家族の事情などなど。そして、そういうことは、ある日突然やってくることも少なからずあると。

だからこそ、企業側にも、働く人の人生の変化を「例外」ではなく「前提」として受け止めながら、本人が尊厳を失わずに働き続けられる仕組みを整えていく。。。そのような方向性が、これからますます大切になっていくのかもしれません。

前野教授が説く「ウェルビーイング経営」もまた、利益のために幸福を追求するというより、幸福を大切にすることを社会の当たり前にしていくという発想です。

そう考えますと、「ライフデザイン経営」という言葉も、制度設計という枠に留めず、私たち一人ひとりの「人生を支える土台」づくりとして捉え直すこともできそうです。

経産省が開設した「ライフデザイン経営」のウェブサイトは、企業のためだけではなく、働く私たち自身にも、これからの働き方や生き方を考える上でのヒントを届けてくれているのかもしれません。

よろしければ、ぜひご覧になってみてください。


参考サイト

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父/夫/Webプロデューサー

自宅庭にあるレモングラスのハーブティーとエナジードリンクとプロギング好きの当サイトWebプロデューサーです。幸福学の第一人者、前野隆司教授のVoicyにある「ディープタイムウォークVoicy版」を聞きながら森の中を歩くことにかなり心地良さを感じてます。三島ウェルビーイング協議会/ウェルビーイングプロギング代表。プロギングジャパン認定プロギングリーダー、GLOBIS公認学び放題アンバサダー、デジタル庁 地域幸福度(Well-being)指標活用ファシリテーター、ウェルビーイング ダイアログカード認定ファシリテーター、静岡県三島市在住です。SNS繋がり大歓迎です!

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