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2026年の幕開け:新年の抱負は「がんばる目標」だけじゃない

日々是幸日

新年の抱負と聞いて、何を思い浮かべますか? 「毎日運動する」「資格を取る」「貯金を増やす」…多くは「達成すべき目標」ではないでしょうか。でも成人発達理論とウェルビーイング研究は、もっと豊かな抱負のあり方を教えてくれます。

なぜ抱負は忘れられてしまうのか

多くの人が2月には抱負を忘れてしまう理由、それは「自分らしくない目標」を立てているからかもしれません。

心理学者のデシとライアンによる自己決定理論では、外的な動機(「〜すべき」「〜しなければ」)で立てた目標は続きにくく、内発的な動機(「本当にそうありたい」)による目標は持続しやすいことが示されています。

「今年こそ痩せなきゃ」は続かないけれど、「健やかに過ごしたい」なら続くかもしれない。志が続かないとき、それは意志の弱さではなく、目標と自分の心との距離が遠すぎるサインなのです。

「なりたい自分」は目標だけじゃない

「大人になってからも人は段階的に成長し続け、思考や価値観の複雑さが発達していく」という考え方である成人発達理論では、人の成長を「できること」だけでなく、「あり方」や「関係性」の変化としても捉えます。

つまり抱負は、何かを達成することだけでなく、「どんな自分でいたいか」「人とどう関わりたいか」を描くものでもいいのです。

3つの抱負のかたち

  1. 達成する抱負 – 「〇〇をする」(従来型)
  2. 存在する抱負 – 「〇〇な自分でいる」(あり方)
  3. 関わる抱負 – 「〇〇な関係を育む」(つながり)

例えば「優しい人でいたい」「家族との時間を大切にしたい」。これらは測定しにくいけれど、ウェルビーイングを高める大切な抱負です。

がんばらない抱負のススメ

心理学者キャロル・ドゥエックの「マインドセット理論」によれば、成長には「努力」だけでなく「柔軟性」も必要です。

がんばる目標ばかりだと、できなかった時に自己否定につながりやすくなります。一方、「心がけ」のような抱負は、日々の小さな選択の中で実践でき、失敗のダメージも少なくなります。

「がんばらない抱負」の例

  • 朝、鏡の中の自分に微笑みかける
  • 困っている人に気づける自分でいる
  • 完璧じゃない自分を受け入れる
  • 人の良いところに目を向ける

これらは「する」ことではなく「いる」ことの抱負。達成を競うのではなく、日々を丁寧に生きる指針です。

ウェルビーイングを育む抱負へ

ウェルビーイング研究では、幸福は「成し遂げること」よりも「今ここにいる充実感」から生まれることが示されています。

新年の抱負は、あなたを追い立てるものではなく、あなたらしく生きるための羅針盤。「がんばる目標」も大切ですが、「ただそうありたい」という願いも、同じくらい価値があるのです。

自分だけの抱負を見つけよう

今年は、達成リストだけでなく、「どんな一年を過ごしたいか」という問いから始めてみませんか?

がんばることも、がんばらないことも。どちらもあなたの大切な選択です。


参考文献

  • Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). The “what” and “why” of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior. Psychological Inquiry, 11(4), 227-268.
  • Dweck, C. S. (2006). Mindset: The new psychology of success. Random House.
  • Erikson, E. H. (1959). Identity and the life cycle. New York: International Universities Press.
  • 前野隆司 (2013). 『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』講談社現代新書.

文献リスト

自己決定理論について

  • Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Self-determination theory: Basic psychological needs in motivation, development, and wellness. Guilford Press.

マインドセットと成長について

  • Dweck, C. S. (2017). 『マインドセット「やればできる!」の研究』(今西康子訳) 草思社. (原著2006年出版)

発達心理学の基礎

  • Kegan, R. (1994). In over our heads: The mental demands of modern life. Harvard University Press.

ウェルビーイング研究

  • 前野隆司・前野マドカ (2022). 『ウェルビーイング』日本経済新聞出版.
  • Seligman, M. E. P. (2011). Flourish: A visionary new understanding of happiness and well-being. Free Press.

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大学教員(博士・心理学)。専門はリーダーシップ教育。包容力のあるやさしい社会・組織づくりのための教育に情熱を注いでいる。「リーダーシップの探求:変化をもたらす理論と実践」(早稲田大学出版部)共訳者。「Global Leadership for Equity and Inclusion in Education: Geopolitical Issues, Diverse Perspectives, and Critical Praxis」(Routledge)共著者。

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