日本の子供たちの自己肯定感は、諸外国と比べて低い傾向があると言われています。「自分自身に満足している」と答えた割合が、韓国・米国・英国・ドイツ・フランス・スウェーデンでは7割を超えているのに対し、日本の若者は5割弱にとどまるという内閣府の調査(平成25年度)は、子供の育ちを考えるときによく引き合いに出される数字です。ただし、本人も自覚できない潜在的な自尊感情を別の方法で測ると、日本の大学生は米国や中国と比べて遜色がなかったとする研究もあり、数字の読み方には注意が必要です。
こうした背景を受け、参議院文教科学委員会調査室の竹内健太氏が、教育再生実行会議(第二次安倍内閣が設置した総理直属の会議)の第十次提言(平成29年6月)を基に、自己肯定感の概念を三つに整理してくれています。
ちなみに、竹内健太氏は、参議院事務局の文教科学委員会調査室に所属し、国の教育政策等の調査研究を担う実務的な研究者です。今回ご紹介する2017年の論文で提唱した「自己肯定感の三つの概念(他者評価・自己受容・絶対的)」の整理は、それまで曖昧に使われがちだった自己肯定感という言葉を体系化したこの明快なフレームワークとして、国会における教育再生などの重要な政策議論を根底で支えています。また、学術的な枠組みを超えて教育現場での具体的な指導や、家庭で子どもと関わる際の指針としても広く引用されており、次世代の健全な心の育成という社会課題の解決に大きく貢献されている方です。
竹内氏が整理された自己肯定感の三つの概念とは、「他者評価等に基づく自己肯定感」(テストの成績や他者からの称賛で育まれる)、「自己受容に基づく自己肯定感」(短所も含めた自分を冷静に受け入れることで身につく)、そして「絶対的な自己肯定感」(保護者等から無条件に愛されることで全存在を肯定できるようになる)の三つです。
三つの中でも竹内氏が特に重要とするのが「絶対的な自己肯定感」で、乳幼児期のこの感覚が、青年期の「自己受容」を支える基盤になると整理しています。この説明を読むと、「乳幼児期の愛情経験が土台になるなら、それが難しかった子はどうなるのか」と不安になることもあるかもしれません。
論文は、その不安に先回りして答えています。教育再生実行会議の専門調査会有識者も務めた伊藤美奈子奈良女子大学大学院教授は、「愛される経験にしても、家庭の中で愛情を受けることが理想的だが、どうしても困難な場合には、教師に大事にされることが、その代わりになりえる」とした上で、「自尊感情を高めるための経験は、いつでも挽回可能で、いろいろなものが代替可能だと考えるべき」と述べています。愛情の源は、保護者だけに限られない。時期も乳幼児期だけに縛られない。この視点は、子供を取り巻く多くの大人にとって、希望になる言葉だと感じます。
そして竹内氏が問い直すのは、そもそもなぜ自己肯定感を育てるのかという根本です。「より良い社会の担い手を育てるため」という視点は大切ですが、それよりも根本的には、一人一人の子供の「幸せ」につながるからこそ、この取り組みに意義があると論文は位置付けています。憲法第13条が定める幸福追求権を踏まえれば、子供を「幸せ」を享受する主体として尊重することが出発点になるというわけです。
「いつでも挽回可能」という言葉が響くのは、子供に対してだけではないように思います。論文の「おわりに」は、「十分に自己肯定感を有していない大人が、子供たちに自己肯定感を高めることを求めても、説得力があるとは言えない」と締めくくられています。子供の話として読み始めたはずが、最後は自分自身への問いかけが返ってくる、そんな論文です。
よろしければ、ぜひ以下の情報ソースをご覧になってみてください!子供の自己肯定感という入口から、大人自身の幸せのあり方まで、深い学びを得られると思います。
出典・参考文献・参考サイト
竹内健太「子供たちの自己肯定感を育む ― 教育再生実行会議第十次提言を受けて ―」『立法と調査』第392号(参議院、2017年9月)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2017pdf/20170908065.pdf
内閣府「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2014年6月)
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html
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