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健康寿命を「政策」にした藤沢市による自治体ウェルビーイングの新しいカタチ

地方自治体

神奈川県藤沢市が新たなビジョン「市政運営の総合指針2028」において「健康寿命日本一」を掲げ、ウェルビーイングを行政政策の中核に据えて舵を切ったことが報道されています。私の暮らす静岡県三島市、そして静岡県が、県民、市民のウェルビーイングの実現に向けた政策を進めていることもあり、自治体によるウェルビーイングへの取り組みについても注目しているなかで、この記事に目が止まりました。(私のいとこは藤沢市に住んでいるので、余計に気になりました。)

人口約44万人を抱える都市圏の自治体が、こうした方針を行政の軸に置く動きは、地域の持続可能な幸福をどう設計するかという本質的な問いに向き合うものとして、とても示唆に富んでいます。

ここで改めて整理しておきたいのは、医療や介護の文脈で語られる「健康寿命(日常的に介護を必要とせず自立して生活できる期間)」と、心理学や公衆衛生学で定義される「ウェルビーイング」との関連性です。健康寿命の延伸は非常に重要な目標ですが、身体的な健やかさだけでは人は心からの満たされ感を得られません。身体的・精神的・社会的な充足が統合されて初めて「よく生きている」という手応えが得られる、というのがウェルビーイング研究の基本的な立場です。

この点について、オックスフォード大学ウェルビーイング研究センターや国連機関が共同発行する『世界幸福度報告書(ワールドハピネスレポート)』の創刊編集者であるジョン・ヘリウェル教授らの研究、ならびにニュージーランド政府の「ウェルビーイング予算(Wellbeing Budget)」の事例を紐解くと、共通する重要な事実が浮かび上がってきます。

例えば、ヘリウェル教授らの研究では、「地域内での落とし物の返還率に代表される相互信頼」や「コミュニティへの強い帰属意識」が、個人の主観的幸福感や健康状態を大きく左右することが実証されています。また、ニュージーランド政府のウェルビーイング予算においても、単なるGDPや医療費の投入量ではなく、「社会的つながり(Social Connections)」や「居場所と承認の実感」が国家の主要な投資・測定領域として設定されています。

これらの分析が示しているのは、生活満足度や健康感を左右する決定的な要素が、医療サービスの質や施設整備といったハード面だけでなく、「この地域で人々と信頼し合い、自分らしくつながっている」という社会的な関係性の質にあるということです。

この理論的枠組みを当てはめてみますと、藤沢市が推進する施策構造はより明解になります。藤沢市が目指す「健康寿命日本一」へのアプローチは、単に医療機関の拡充や疾病予防にとどまるのではなく、13ある行政区域の市民センターを「多世代が出会い、ゆるやかにつながる拠点」として機能させる重層的な支援体制や、スマートシティ(Fujisawa SST)において住民同士の交流を生み出す仕掛けづくりなど、「社会的なつながり(コミュニティの健全さ)」を健康づくりの基盤として位置づけています。

「健康寿命」という測定可能な指標を出口に置きつつ、そのプロセスとして地域コミュニティの温かなつながりや居場所を丁寧にデザインしていくアプローチは、医療・介護の従来型の枠組みの境界線を広げ、住民一人ひとりの主体的で豊かな暮らしを支える自治体政策の新しいモデルになり得るのではないかと感じています。

都市の持続可能性と住民のウェルビーイングをいかに両立させるか。この課題に対して各自治体がそれぞれの自治体の特徴を活かし、どのような答えを出して挑戦していくのか、藤沢市の今後の具体的な実践とデータに基づいた検証の広がりに期待したいなあと思います。

出典・参考文献・参考サイト

自治の未来 藤沢市が描くウェルビーイング 「健康寿命日本一」への挑戦〈藤沢市〉(タウンニュース) https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/townnews/region/townnews-841926?page=2
Helliwell, J. F., Layard, R., Sachs, J. D., De Neve, J.-E., Aknin, L. B., & Wang, S. (Eds.). (2024). World Happiness Report 2024. University of Oxford: Wellbeing Research Centre.
Government of New Zealand. (2019). The Wellbeing Budget 2019. New Zealand Treasury. ・Mintrom, M. (2019). “New Zealand’s Wellbeing Budget Invests in Population Health.” The Milbank Quarterly, 97(4), 925–934.

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父/夫/Webプロデューサー

自宅庭にあるレモングラスのハーブティーとエナジードリンクとプロギング好きの当サイトWebプロデューサーです。幸福学の第一人者、前野隆司教授のVoicyにある「ディープタイムウォークVoicy版」を聞きながら森の中を歩くことにかなり心地良さを感じてます。三島ウェルビーイング協議会/ウェルビーイングプロギング代表。プロギングジャパン認定プロギングリーダー、GLOBIS公認学び放題アンバサダー、デジタル庁 地域幸福度(Well-being)指標活用ファシリテーター、ウェルビーイング ダイアログカード認定ファシリテーター、静岡県三島市在住です。SNS繋がり大歓迎です!

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