「自分が見ているものは、本当に正しいのだろうか」。この問いをここまで体感的に突きつけられたのは、久しぶりのことでした。月の大きさを手で示してもらうと、ほとんどの人が実際よりはるかに大きく示してしまう。答えは5円玉の穴の中にすっぽり収まるサイズだそうです。
この動画では、陶彩画家の草場一壽さんと前野隆司先生(武蔵野大学ウェルビーイング学部長/慶應義塾大学名誉教授)が、認識と幸せについて語り合っています。前半は草場さんのワークショップ。富士山の上と下の辺はどちらが大きく見えるか、同じ色のはずが違って見える色のブロック。次々と繰り出される錯覚の問いに、会場は笑いと驚きで包まれます。
草場さんの説明はこうです。私たちが五感で受け取るものはすべて電気信号として脳に入り、脳が組み立て直した世界を「本物」だと思っている。だとすれば、感じ方が人によって違うのは当たり前で、いくら正論を言っても届かないことがある。その認識の違いを理解することが、幸せを考える出発点になる、というわけです。
受けて立つ前野先生は、元々の専門が振動工学だと明かしたうえで、心理学の実験を持ち出します。心理学者マイケル・R・バッソらが1996年に発表した研究で、図形を見せて、全体に注目する人か部分に注目する人かを測り、気分や幸福度との関係を調べたものです。前向きな気分や楽観性は全体を見る傾向と、抑うつや不安は細部に注目する傾向と結びついていました。知覚の癖と幸せの感じ方が地続きだという話に、アートと科学が思いがけず噛み合う瞬間を見た気がしました。
自分の認識がいかに錯覚に満ちているかを知りながら、それでも幸せに生きるとはどういうことか。その問いに関心のある方には、特に届く内容だと思います。そうでない人にとっても、超有料級の二人の先生によるワークショップは、楽しさと学びがてんこ盛りです。きっとどなたでも楽しく視聴できるのではないかと思います!

出典・参考文献・参考サイト
Takashi Maeno「陶彩画家 草場一壽 × 幸福学者 前野隆司 対談」
https://youtu.be/qyvZR3mpBis
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