社会課題に立ち向かうリーダーは、強くなければならない。そう思っていた人には、少し意外な研究結果かもしれません。今井道子さん、前野隆司前野隆司教授らが共同研究した論文(2023年、日本システムデザイン学会誌)は、日本で成功している社会起業家たちに共通する資質として、「強さと弱さを併せ持つリーダー」というあり方を特定しています。
この研究では、ETIC.(2021年までに1,805名の社会起業家を輩出したNPO法人)とボーダレス・ジャパン(16カ国で49のソーシャルビジネスを展開)に所属する、社会起業家13名を対象に半構造化インタビューを実施し、M-GTAでまとめています。ちなみに、M-GTAとは、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのことで、インタビューデータを切片化するのではなく、分析者の視点を通じて概念を生成・理論化する質的分析手法です。途上国支援から障害者就労支援、医療・介護まで13の社会課題領域にわたる分析から、8つのカテゴリーと42の概念が導出されました。12人目のインタビューで新たな概念が出なくなり、理論的飽和に達したと判断されています。
8つのカテゴリーのうち、英米と比較して日本の社会起業家に特有と特定されたのは3つです。
1つ目は【強さと弱さを併せ持つリーダー】。インタビューでは「すごく壊れやすい弱さを抱えているリーダーだと思います。だからこそ、不安を感じている人や自信を失くしている人をすごく理解できたり、察知できたりしますね」という言葉が語られています。欧米型リーダーシップ研究が「力への欲求」を重視するのに対し、弱さを持つからこそ弱者に寄り添えるという、異なる構造が見えてきます。
2つ目は【利益は社会課題を解決する手段】。「売上やお金が目的では長続きしない」という価値観がベースにあります。資金集めとは社会からの支持を集めることであり、その試練の中で起業家の資質がさらに鍛えられます。
3つ目は【ゆるいつながりの組織をつくる】。「自分が自分らしく、メンバーも組織に縛られず自分らしく」という水平でゆるやかな組織づくりが日本型の特徴として浮かび上がり、「笑いを大切にする」という具体的な言葉も多くの起業家から語られました。
この「ゆるいつながり」の感覚は、特に近年注目を集めています。強固な組織論よりも、関わる人それぞれが自分らしくいられる場をつくることで、長く続く活動が生まれてくることがわかってきたためです。
強くなければ社会課題に挑めない、というイメージを持たれている方々もおられるかと思います。しかし、自分自身の弱さや迷いを抱えながらも、それでも一歩踏み出している方々がいるとしたら、皆さんはどのように感じられるでしょうか?
現在も多くの社会課題に向き合って活動をされている個人、団体、法人があり、今後もそういった方々は増えていく傾向があると言われています。弱さを認め、ゆるくつながり、使命のために利益を追う。そんなあり方が、社会とウェルビーイングをともに豊かにしていく道なるのかもしれません。この投稿を読まれている方々の中にも、もしかすると、現在、社会課題に向き合って活動されている方や、計画されておられる方々もいるかもしれません。よろしければ、以下のリンクから、論文に目を通してみてください。何か気づきのきっかけになりましたらうれしいです。
出典・参考文献・参考サイト
今井道子・保井俊之・前野隆司(2023)「成功する日本の社会起業家の資質とふるまいの構造化」日本システムデザイン学会誌 第4巻第1号
https://takashimaeno.com/wp-content/uploads/2025/04/2023_systemdesign_imai_yasui_maeno.pdf
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