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「お金を稼ぐこと」と「幸せ」は対立するのかを学生たちの鋭い視点と幸福学から考える。働くことの意味とは?

雑誌

安藤優子さんが東京新聞のコラムで投げかけていた、「カネ稼ぎとウェルビーイングは対立するのか」という問い。この記事を読みながら、私自身も「働くことと幸福の関係」について改めて深く考えさせられました。

コラムの中で特にハッとさせられたのは、武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司教授の講義を受けた学生たちの意見です。幸福学では、お金や地位のように他人と比較できるものを「地位財」、健康や人とのつながり、安心安全のように他人と比較しなくても喜びを感じられるものを「非地位財」と呼びます。一般的に、地位財による幸せは長続きせず、非地位財による幸せは長続きすると言われています。

しかし学生たちは、「お金を稼ぐこと(地位財)によって、家族で旅行に行ったり美味しいものを食べたりする幸せ(非地位財)を生み出せるのだから、両者は切っても切れない関係だ」と語ったそうです。お金と幸せを対立構造で捉えるのではなく、見事に統合していく、本当に鋭く地に足のついた視点だと感じます。

この「収入と幸福度の関係」については、ウェルビーイング研究の世界でも長年議論が続いてきました。もっとも広く引用されてきたのは、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授とアンガス・ディートン教授による2010年の研究です。ある一定の年収(当時は約7万5000ドル)までは収入が増えるほど日々の幸福感も上がりますが、そこを超えると影響が頭打ちになるという「飽和点」の存在を示しました。

一方で、マシュー・キリングスワース博士が2021年に発表した研究では、「高収入層になっても収入が増えれば幸福感も上がり続ける」という異なる結果が出ました。最終的に彼らは共同で分析を行い、2023年に「基本的には収入と幸福感は連動して上がり続けるが、もともと不幸を感じている層に限っては途中で頭打ちになる」という統合的な見解を発表しています。つまり、お金を稼ぐ行為そのものが、幸せを邪魔するわけではないということです。

では、なぜ「稼ぐこと」と「幸せであること」が対立しているように見えてしまう瞬間があるのでしょうか。それは、お金そのものの問題ではなく、「働き方」の中で大切なものが失われているサインなのかもしれません。

心理学者のエドワード・デシ教授とリチャード・ライアン教授が提唱する「自己決定理論(SDT)」では、人がやりがいを持って動くためには、自分で選んでいるという「自律性」、自分は役に立っているという「有能感」、そして他者と良い関係を築けているという「関係性」の3つが必要だとされています。

「お金のためだけ」と割り切って、自分の意志や職場の人間関係を犠牲にしながら働く状態が長く続くと、この大切な心理的欲求が少しずつ奪われてしまいます。安藤さんのコラムの最後にも、60歳以上の多くの方が「社会の居場所」や「心身の健康」のために働きたいと答えているデータが紹介されていました。仕事を通じた人とのつながりや、誰かの役に立っているという実感は、まさに前野教授の「幸せの4因子」にも深く通じるものです。

お金を稼ぐことと、幸せになることは決して矛盾しません。大切なのは、日々の仕事の中で「自分で決めている感覚」や「周りの人とのあたたかい関わり」を、少しでも見つけられているかどうか。明日の仕事の中で、ほんの少しだけ自分の意志でやり方を工夫してみたり、職場の仲間に「ありがとう」と声をかけてみたりする。そんな日常の小さな行動の積み重ねが、稼ぐことと幸せを両立させる確かな一歩になるのではないでしょうか。(東京新聞デジタルは、無料会員登録をすれば月3本まで有料記事を無料で読めます。)

出典・参考文献・参考サイト

〈安藤優子コラム〉カネ稼ぎと「ウェルビーイング」は対立する? 仕事をめぐる幸福論(東京新聞デジタル)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/496810
Kahneman, D. & Deaton, A.(2010)「High income improves evaluation of life but not emotional well-being」PNAS.
https://doi.org/10.1073/pnas.1011492107
Killingsworth, M. A., Kahneman, D., & Mellers, B.(2023)「Income and emotional well-being: A conflict resolved」PNAS.
https://doi.org/10.1073/pnas.2208661120
Deci, E. L., & Ryan, R. M.(1985)「Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior」Springer.
前野隆司(2013)「幸せのメカニズム」講談社現代新書.

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父/夫/Webプロデューサー

自宅庭にあるレモングラスのハーブティーとエナジードリンクとプロギング好きの当サイトWebプロデューサーです。幸福学の第一人者、前野隆司教授のVoicyにある「ディープタイムウォークVoicy版」を聞きながら森の中を歩くことにかなり心地良さを感じてます。三島ウェルビーイング協議会/ウェルビーイングプロギング代表。プロギングジャパン認定プロギングリーダー、GLOBIS公認学び放題アンバサダー、デジタル庁 地域幸福度(Well-being)指標活用ファシリテーター、ウェルビーイング ダイアログカード認定ファシリテーター、静岡県三島市在住です。SNS繋がり大歓迎です!

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