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「強み」は、すでにそこにある

しあわせコラム

私たちは「強み」と聞くと、少し身構えてしまいます。特別な才能、突出した能力、誰もが認める長所。そんなイメージが先に立ち、「自分には思い当たらない」と感じる人も少なくありません。
しかし、ポジティブ心理学が示す強みは、そうした“特別さ”とは少し違います。むしろ、あまりに自然で、当たり前すぎて、自分では強みだと気づきにくいもの。それこそが、本質的な強みなのです。

ポジティブ心理学における「強み」

ポジティブ心理学では、強みを「パフォーマンスの高さ」ではなく、人がよりよく生き、よりよく機能するための資質として捉えます。その代表的な枠組みが、VIA-IS(Values in Action Inventory of Strengths) です。これは、マーティン・セリグマンとクリストファー・ピーターソンによって開発された、人格的強み(Character Strengths)の分類体系で、文化や国を超えて共通するとされる24の強みを提示しています。たとえば、

  • 好奇心
  • 誠実さ
  • 親切心
  • 忍耐
  • 公平性
  • 感謝
  • 希望

といった、人の在り方そのものに関わる特性が含まれています。
ここで重要なのは、VIAが扱う強みは「持つ・持たない」で語られるものではない、という点です。誰もがすべての強みを持っていて、ただ強弱の現れ方が違うだけ。それが、この理論の前提です。

強みは「当たり前」に感じている

VIA研究では、人が最もよく使っている強みほど、本人にとっては「努力している感覚がない」ことが分かっています。たとえば、

  • 無意識に周囲を気遣っている人は、「親切心」を特別だと思っていない
  • 状況を楽観的に捉える人は、「希望」を能力だと認識していない
  • 物事を深く考える人は、「内省」や「洞察」を強みだと感じていない

など。これらは単に「自分らしさ」であり、自分にとって「普通の反応」だからです。この「当たり前さ」こそが、強みの最大の特徴です。強みは、頑張って身につけたスキルではなく、使うほど自然になっていった思考や行動なのです。

強みは「伸ばす」より、「うまく使う」

従来の自己啓発では、「弱みを克服する」ことが重視されてきました。一方、ポジティブ心理学は、問いを少し変えます。それは、「強みを、どの場面で、どのように使っているか」という問いです。VIA-ISに基づく研究では、自分の上位の強み(Signature Strengths)を意識的に使っている人ほど、

・主観的幸福感が高く
・エンゲージメントが高まり
・疲労感や燃え尽きが少ない

ことが示されています(Seligman et al., 2005)。
ここで言う「使う」とは、強みを誇示することでも、過剰に発揮することでもありません。自分の強みを認識した上で、場に応じて、その出力を調整することを指します。たとえば、親切心という強みは、積極的な支援としても、あえて一歩引いて見守る姿勢としても発揮できます。また、他人に向けがちな親切を、自分自身に向けることも、同じ強みの健全な使い方の一つです。

弱みとは、「強く出ていない強み」である

ポジティブ心理学の強み観は、「人はそもそも、何かが欠けている存在ではない」という前提に立っており、VIAの視点では、「弱み」を固定的な欠点とは捉えません。多くの場合、それは強みが十分に使われていない状態、あるいは文脈に合っていない形で出ている状態です。

  • 慎重すぎる → 熟慮・判断力という強み
  • 頑固 → 信念・一貫性という強み
  • 気にしすぎる → 共感性・配慮という強み

問題は資質そのものではなく、使われ方です。この考え方は、自分を評価する視点を大きく変えます。「直すべき欠点」だったものが、「調整すべき強み」に見えてくるからです。
足りないものを探すより、すでにあるものを認識し、活かす。その視点で見ると、自分の中のあらゆる特性は、強みに変換可能な素材になります。強みとは、磨き上げるものというより、正しく理解し、適切に配置するものなのかもしれません。

「強み」は、すでにそこにある

強みは、すでに、日常の思考や行動の中に現れています。それが当たり前すぎて気づいていないだけ。
それを「うまく使う」視点を持つだけで、弱みに見えていたものさえ、別の顔を持ち始めます。
「あなたは、すでに持っているものを、どう使いますか。」


参考文献

  • Peterson, C., & Seligman, M. E. P. (2004). Character Strengths and Virtues. Oxford University Press.
  • Seligman, M. E. P., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive psychology progress. American Psychologist.
  • Niemiec, R. M. (2018). Character Strengths Interventions. Hogrefe.
  • VIA Institute on Character (https://www.viacharacter.org)
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ウェルビーイングデザイナー。 生きとし生けるものがウェルビーイングな世界をデザインしたいと思って活動しています。 一般社団法人ウェルビーイングデザイン/JPPI認定ポジティブ心理学トレーナー/マインドフルネストレーナー/ISBA認定シンギングボウルプレイヤー/スタイルクルーズ認定My Style Coach/武蔵野大学しあわせ研究所客員研究員/会社員

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